目次
1. 概要
イノベーション・ポート(仮称)は、未来を切り開き、次世代の社会を築くための科学技術都市です。この都市は産業界、官公庁、学術機関が連携し、オープン・イノベーションの原則に基づいて次世代の技術と産業を前進させます。また、シリコンバレーのような都市モデルに、持続可能性、分散性、文化融合の要素を新たに統合した日本発のイノベーション都市でもあります。都市計画の新たな枠組みとして特区を設け、イノベーションを推進するための新しい法律や規制を導入し、イノベーション・ポートの実現を目指します。 
2. 背景
これまで科学技術都市のモデルはシリコンバレーや深圳などの都市に焦点が当てられてきました。そして、ほとんどはシリコンバレーを模倣しようとしており、日本もその流れに従っています。しかし、日本は長寿企業が数多く存在し、その経験と信頼性は非常に貴重であり、調和を強みに持っています。事実として、世界に現存する創業100年以上の企業数は、50%以上を日本企業であり、創業200年以上の日本の企業数も65%を占めています。日本型のモデルは人々が現在求めている持続可能性や分散性といった精神に適したものである可能性が非常に高いです。
しかし、現状の日本の都市部は全く別物です。人口は増えていますが、人々の関わりが希薄で持続可能な都市とは言い難い状況であり、特に東京では一極集中が進み、地方の衰退が顕著です。分散性もほとんどありません。G7の中でも特に超高齢社会の課題が深刻な日本には、国家存続のための新たな都市計画が求められており、世界もその対策に注目しています。このような世界にも事例がないなか、課題解決するための新たな都市モデルを提示できれば、世界中に展開できる新しい科学技術都市となる可能性があります。
3. 目的
イノベーション・ポート計画の主要な目的は、現状のイノベーション都市のモデルをさらに発展させ、次世代社会の形成を促進する都市モデルを開発することにあります。科学技術を起点に、産業界、官公庁、学術機関などを集積させ、周囲には自然と調和した文化都市をつくり、長期にわたり住む価値のある地域や、第二、第三の主要都市を育てていきます。
4. 目標
イノベーション・ポート計画の目標は、世界中の地域に持続可能且つ分散型のイノベーション都市を展開し、100万人以上の人々が集まる都市を実現することです。各ポートが協力し、国境を越えた関係を築き、文化的な世界平和を推進します。そして、超高齢社会、格差の拡大、環境破壊、人口の一極集中、伝統と文化の消失など、世界が直面する多くの課題に対応するために、日本発・日本型の新しい都市モデルを提供します。
5. 提供価値
イノベーション・ポートのモデルを採用することの価値は、第二、第三以降の主要なイノベーション都市を育てることができることです。また、各ポートの連携が容易なことです。これらの利点により、国家や地方の活気を取り戻し、国内の均衡を取りながら、科学・自然・文化を尊重する都市計画を推進します。これは日本だけではなく、アフリカ地域などの今後発展する国々や、その他の高齢社会が進んでいる先進国にもモデルを提供できる可能性があります。
そして環境にやさしいグリーンな近未来都市は、まだ世界でも構想段階です。高層ビルが立ち並ぶ都市は、環境に負荷をかけ、人々の精神的な健康を損うことは明らかです。これに対し、自然と調和した都市をつくることで、地球を保護し、人々の精神的な健康を促進する社会への転換を目指すことが必要です。このアプローチにより、人類の生活の質を向上させ、後世にわたって地球の資源を守ることができます。
6. 基本方針
ここではイノベーション・ポート計画の精神として、七つの主要な要素を抽出し、基本方針としてまとめてみました。
- 共創: 大学、大企業、スタートアップ、政府、地方自治体、市民など、様々なステークホルダーが連携し、革新的なアイデアとプロジェクトを共同開発し、社会に実装する。産業を生み出す。
- イノベーション: 科学技術の研究を中心に、異なる分野の専門家が連携し、新たなイノベーションを促進する。研究者だけでなく、実業家や投資家も参加し、新たなビジネスモデルも開発する。
- 国際連携: グローバルなパートナーシップを築き、国際的な視野で問題に取り組む。積極的な企業招致を行い、国際的な人材を集める。人材不足を解消し、国際的な競争力を高める。
- 持続可能性: 環境に優しい都市をつくり、景観を保護し、人々の精神的な健康を促進する。また、地球の資源を最大限に活用し、地球環境を保護する。
- 分散性: 都市一極集中ではなく、長期的に居住する価値のある都市をつくり、地方の発展を促進する。また、それぞれが独自の特性を持ち、相互に連携する都市をつくる。
- 伝統・文化の尊重: 地域の伝統や文化(スポーツ、芸術、食文化、エンタメ等)を尊重し、文化都市を形成します。また、文化融合も同時に推進します。
- 次世代の人材育成: 若い才能を育成し、未来のリーダーを支援。若者の力を最大限に引き出し、次世代の礎を築く。また、若者が住める都市をつくることも重要です。
7. 独自性
共創、イノベーション、国際連携はこれまでの科学技術都市のモデルにもあります。さらに次世代の人材育成が重要なことは、世界中の都市が認識しています。新たな独自性として、以下の3つの要素を挙げます。
1. 持続可能性の追求
まだ見ぬ持続可能な都市の創造を目指します。自然と調和した社会が、個々の精神的な健康を高め、新しいエネルギーシフトの時代に不可欠であると信じています。環境への負荷を最小限に抑え、生活環境を向上させるために努力することは、人類の未来にとって非常に重要なことです。
2. 分散的な都市の発展
第二、第三の主要都市を育て、地域の発展を推進することも重要な要素です。分散性を強調し、地域の特性を最大限に引き出す都市計画を採用します。これにより、人々の生活の選択肢を増やし、地域全体の繁栄をサポートします。また、複数のイノベーション・ポートを連携させることで、世界とのつながりを強化し、国際的な共創力を高めます。
3. 地域の伝統・文化の尊重
単に物理的な豊かさを求めるのではなく、地域ならではの伝統や文化の重要性を強調します。文化は社会の精神的な豊かさを形成し、人々のアイデンティティとつながりを深めます。文化の奨励と支援を通じて、総合的な幸福を追求し、人々の生活の質を向上させます。これが世界中に広がりを見せ、ときに文化融合を交えながら、文化的な世界平和を推進することができます。
8. 計画
はじめに、北海道十勝地方に「イノベーションポート・十勝」を設立します。この地域での実証実験を通じて、新たなソリューションやビジネスモデル、都市モデルを改善・開発し、他の日本の地域や世界の地域への展開に備えます。重要なことは、初期段階から産官学連携と国際連携を前提にすることであり、それが十勝全体の社会に貢献できることを示すことです。また、これは官の支援がなければ実現できないことでもあります。特区を設けたり、住宅やインフラの整備を行うなど、官の支援が必要です。その上で、都市モデルを作成し、都心に限らず産業に特化した都市計画を提案し、実現していきます。
9. 分野
各地域のイノベーション・ポートの地理的な特徴に合わせて、特化した分野を設定することで、より分散的な都市をつくることができます。以下には、分野の例を示します。
農業 / 宇宙 / 医療 / 教育 / 金融 / エネルギー / 交通 / ロボット / AI / IoT / ブロックチェーン / VR・AR・MR / 3Dプリンター / 量子コンピューター / ネットワーク / セキュリティ / プライバシー / ビッグデータ / バイオテクノロジー / ナノテクノロジー / エッジコンピューティング / 人工生命 / スマートシティ / スマートモビリティ / 電気・水素自動車 / ドローン輸送 / 自動倉庫 / ゲノム編集 / 半導体 / データセンター
10. 場所
イノベーション・ポートは、地方都市に設立することを想定しています。特に日本の地方都市は、東京一極集中の影響を受けており、衰退が進んでいます。これを食い止めるために、イノベーション・ポートを設立し、地域の発展を促進します。
| 略称 | 名称 | 名称(英語) |
|---|---|---|
| IP:TOKACHI | イノベーションポート・十勝 | Innovation Port Tokachi |
| IP:TOKUSHIMA | イノベーションポート・徳島 | Innovation Port Tokushima |
| IP:KAGOSHIMA | イノベーションポート・鹿児島 | Innovation Port Kagoshima |
| IP:MIE | イノベーションポート・三重 | Innovation Port Mie |
| IP:TAOYUAN | イノベーションポート・桃園 | Innovation Port Taoyuan |
11. 名称
イノベーション・ポートは仮称です。略称、商標、響きなどを考慮して、名称を検討する必要があります。以下に、名称の候補を示します。(そのほかにも、名称を募集中です。)
- イノベーション・ポート(Innovation Port)
- イノベーション・ハブ(Innovation Hub)
- ビジョン・ポート(Vision Port)
参考文献
- OMAがコンペで勝利した、中国・成都市の、未来科学技術都市のエリアマスタープランと建築デザイン。広大な敷地に自然形状に沿った建物等を設計. architecturephoto. https://architecturephoto.net/110442/
- 雨宮健人. (2022.10.20). 世界の長寿企業ランキング。創業100年企業、日本企業が50%を占める. 周年事業ラボ. https://consult.nikkeibp.co.jp/shunenjigyo-labo/survey_data/I1-06/